つまりはこの重さ。
今週のお題「おすすめの本」
- 作者: 梶井基次郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/10
- メディア: 文庫
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何やらはてなダイアリーにて、「今週のお題」なる話題提供を見つけたのであやかってみる。
今回、「おすすめの本」の下、読了を苦手とする私が身分不相応ながら紹介するのは、梶井基次郎氏の檸檬という短編小説だ。因みにその短さというと、先述の通り読了が苦手な私でもすんなり一読が出来るくらいだった。
なお、言わずとも知れたこの作品をこのようにあえて紹介するのには、私なりにこの作品に対して思い入れがあるからであり、とりわけ文章の書き方を忘れてしまったとき、この檸檬に度々助けられている。言い換えるならば私にとって檸檬は文章を書く時の見本だと考えている。
さて上述で檸檬はすんなり一読出来たと記したが、この「すんなり」には文量はもちろんのこと、その流麗な文章も関係している。何というか文と文のつなぎが綺麗に思える。
心情は得てして無造作で規律性がなかったりする不思議なものであるから、その自由な感情らを文として紡ぐのは容易でない。だからこそ、梶井基次郎氏の繊細な心情描写が光ってくる。
したがって何度でも読める上に、何度でも見本となって、何度でも私を助けてくれるのだ。
内容に関しては読者各々の解釈がある手前、おしなべてこれこれであると述べることは出来ないが、私は檸檬を読み終えるとくすぐったい気持ちになることが多い。
それこそ喩えるならば、まるで心が檸檬を食ったようになってしまい、そうしてじわじわとそのうち爽やかな気持ちがやってくるのだ。
もう少しここに関して詳しく述べたいところであるが、この過程を生半可に説明してしまうと本来あるべき風流のようなものが損なわれてしまうかもしれないので伏せておく。
強いていえば、きっと一読が終わってしばらく余韻を味わっていると、著者と一緒になって「ははは」と声をあげたりしながら京極を下って行きたくなるだろう。
最後に補足を一つ。今回の本の紹介にあたり、はてなダイアリーに記されていた手順に沿って紹介したが、本書は青空文庫にて公開されている。興味がある方は是非。